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水をのんでまた眠る。

北沢タウンホールという、いっつも前は通るんだけどじつは初めて入る会場で、七里圭監督『眠り姫』を観てきた。観てきた、というより「聴きに行った」といったほうが正確なのかも知れないというのは、自分も『晴れた家』と『新しい人』という作品でお世話になっている作曲家・侘美秀俊さんちの楽団カッセ・レゾナントの演奏会でもあったから。ちなみに3回公演の最終回、場内満員。

えーとつまり、『眠り姫』という映画にカッセ・レゾナントが生演奏で音楽をつける、という珍しい試み。概要とかあらすじなんかは公式サイト(画像クリックで飛べます)で見ていただければわかるのですが、上映(公演)のキモを知るには観に行くしかない。あの空間でここちよく鑑賞されるために、徹底的にライブチューンされていたので。

まずこういう試みが実現されたということがすごいわけで、関係各位の企画力と粘りと情熱を尊敬せざるを得ないですよ。思ってても実現はしないもの普通。しかも既成の映画にただBGMをつけるってわけじゃなく、室内楽団の生音が乗っかるということを完全に想定した上で再撮し音響をレタッチし全編が再構成されてる。指揮者でもある侘美さんの手元を見ていたら、ある場面でパワーブックを操作しているように見え、それって「セリフを出してからフルート」、みたいに音の方からのライブ演出が施されていたのではなかったか。もしそうならすごいおもろい。映画上映会というより音響アートな空気さえ醸し出してた。 映像はほとんどが情景とか8mm撮影の夢想的なカットアップで構成されていて、そこに役者の声とSEが乗る。ラジオドラマのような詳細さはないが、だいたいあんな感じを想像してもらえば。つぐみ、西島秀俊、山本浩司a.k.a.班長の声が印象的で、とにかく耳が気持ちいい。つぐみさんと山本さんの音だけラブシーンは、声が前面に出てるせいで非常にエロかったです。はい。自分の隣に座ってたおばはんは固まってましたけど。

ただ眼前で展開される映像の連なりと「耳が気持ちいい」感じに身を委ねるというふうに観ていて、それはなかなかしたことがない体験で、監督の作戦勝ちであり自分はM的に享受してました。なにを書いてるのかわからなくなってきましたが要するに刺激的だったということです。

ただ思ったのは、音楽の入り方が「ここが音楽パート」みたいに結構明示されていたことが意外だったということ。音楽もっと入らないの?と思った。これは、自分が事前に想像していた作品形態がもっと「映画と生演奏のガチンコ結合」みたいな感じで、要するに全編音楽入りっぱなしなのかと思っていたもので一人相撲なんですけど。
あと、すごく優秀なプロジェクター(DLP?)で上映されたので微妙な明暗のニュアンスまではっきりわかったのは素晴らしいのだけど、フィルム!でやったらもっといいんじゃないか!とこれまた一人相撲で感想はこのくらいで。フィルムだといろいろ不都合もあるんでしょうがビデオプロジェクターと組み合わせたりいろいろと方法はあると思ったもので。

Comments

ご来場ありがとうございました。そして詳細なレビューもありがとうございます。
というか、さすがに視点が鋭いでございます。手元でコントロールしていたのは、部分的な台詞でございます。つまりスコアのタイミングに、合わせて再生させていました。旋律と旋律の間に台詞を埋め込むという仕組み。そして、雲が渦巻くシーンでは、台詞にエフェクトをかましました素材をパワーブックで再生しつつ、客席後方にある音響ミキサーにて、七里監督自らフェーダー操作をしていました。つまり、リアルタイムで台詞と音楽を戦わせていたというからくりですが、どこまで伝わったかは不明です。(苦笑)やっていたほうはドキドキなんですけどね。

at 05/17/05 11:35:12

侘美さんその節はお疲れさまでした。登場するときの演技がかっこよかったですよ!!!
なるほど、セリフも音楽の一部にという考えはすごい明確に伝わってきてて面白かったです。みんな明らかに「映画を観ている」ので、ライブ操作は気付かれなかったかも知れないですけど、それがいいのかも。手法これみよがしなのは冷めるので。
昔原田大三郎というひとが、MIDIキーボードの一鍵一鍵に短い映像を登録しといて、音楽に合わせて「映像を奏でる」ということをやっててそれを思い出したんですけど、それはVJのハシリみたいなもんで。『眠り姫』は映画方向からの実験なので自分はすごい興味ぶかく、勉強になりました。

at 05/18/05 15:50:43

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